大好きな落語絵本の10冊目。
題名の「たがや」とは、何のことかと思ったら、桶や樽にはめてある、竹で編んだ輪のことだとか。このへんの事も、絵解きで詳しく解説してあるところが、馴染みの薄い現代人には親切な作りです。「たががゆるむ」「たががはずれる」は、ここからきた言葉だそうです。勉強になります。
さて、お話の内容は、江戸の隅田川の花火大会が舞台で、仲の良い長屋の仲間に誘われて、身重の奥さんと花火に行ったたが屋のしんさんと、おきよさんの思いがけない橋の上での出産のバタバタを描いております。
何しろぎゅうぎゅう詰めで、身動きも取れない所で、突然産気づいたものだから、さぁ大変。そこに運良く、産婆のおばあさんが登場するのですが、何しろ腕はあっても、肝心のお湯とたらいがありません。
そこで、人情溢れる江戸の下町っ子が、力を貸し合って最後の大きな打ち上げ花火と、同時に無事出産となるのですが、どうやって、お湯とたらいが集まったかは、見てのお楽しみです。
とにかく、人情を感じましたし、近所で花火に誘い合う、昔の長屋の仲の良さにも魅力を感じました。
江戸弁を駆使した落語絵本で、笑えるのですが、とってもドラマチックな出産劇に仕上がっておりますので、母の目線で見た時に、しみじみと感動してしまいました。
表紙の一番最後に、無事に産み落とされた、かわいい赤ちゃんが、たがの丸の中でスヤスヤと眠る姿が描かれていて、こちらまで幸せをもらった気分になりました。