奈良時代の律令国家を支える交通と伝達のシステムである「駅伝制」を背景にしたお話。電話もメールもない時代、国の大事な知らせを伝えるのは、役人である「駅使(はゆまづかい)」。彼らの道案内をしたり世話をするのは「駅家(うまや)」にいる「駅子(うまのこ)」。女の子でありながら駅子になることを願う小里の成長物語です。
「駅伝制」という、よく知らない歴史の一面の物語でしたが、なおさら興味深く面白く読めました。そして、疎いながらも、大伴家持や行基、万葉集の編纂、大仏建立という知っている名前や歴史が出てきたので、あのあたりの話なんだな、と見当もつきました。
ちょっとハラハラするストーリー展開に加え、ロマンスもあります。昔むかしの歴史的事実に人を配置し、息を吹き込み、物語を紡ぎあげる作者の想像力に拍手です。他にはない物語です。