この絵本は一人称で書かれています。桃太郎の目を通して周りを見るので、読んでいるうちに、いつの間にか自分が桃太郎になった気持ちになります。
桃太郎としての自分を見つめる、おじいさんおばあさんのいろんなまなざし。その目を見ていると、自分は愛されているんだ、と心の底から思えます。
そのおじいさんおばあさんが、鬼の話を聞いて心配そうな表情をします。そうなったらもう、桃太郎が鬼退治をしよう!と決心するのは自然な流れです。
大切にしてくれている人を大切にしたいと思う気持ち。その人たちのために何かをしたいと思う気持ち。
その気持ちはイヌやサル、そしてキジにも伝わって、彼らが桃太郎を助けたいと思うのも自然な流れです。
誰かを想う気持ちが周りの誰かを動かす。イヌもサルもキジも、ちょっとくらい怖い目にあったって、桃太郎を恨んだりは決してしないでしょう。もちろん、桃太郎自身も、おじいさんおばあさんを恨んだりしません。
もしも自分が桃太郎だったら、イヌだったら、おばあさんだったら。いろんな誰かになりきって、いろんなことを考えさせてくれる素敵な絵本だと思います。