5月2日に92歳で亡くなった加古里子(かこさとしというひらがな表記での著作も多い)さんは絵本作家として生涯現役であり続けました。
その証拠に2018年1月、「だるまちゃん」シリーズの新作3作を同時出版しました。この絵本は、そのうちの1冊で、残りは『だるまちゃんとはやたちゃん』、『だるまちゃんとキジムナちゃん』になります。
加古さんが「だるまちゃん」シリーズの最初の作品となる『だるまちゃんとてんぐちゃん』を刊行したのが1967年ですから半世紀にわたって描き続けた作品群といえます。
この作品でだるまちゃんの相手になるのは「かまどんちゃん」。
「かまどん」といってもあまり知られていない存在だと思います。
この子は東北地方の岩手や宮城で言い伝えられている、旧家のカマドに黙々と座ってその家の危険から守ってくれる火の守り神のことです。
そのカマド神を加古さんは子どもの姿に変えて、描きました。
しかも、この作品のだるまちゃんは三人の女の子とままごとの真っ最中。でも、ままごとのお料理がおいしくないので文句をいうと、かまどんちゃんを紹介されます。
かまどんちゃんは料理も得意で、だるまちゃんは大喜び。
そこに、何やら焦げくさい臭いがして、だるまちゃんたちは火事を発見して、見事に消し止めるお話です。
かまどんちゃんはさすがに火の守り神だけのことはあります。
この作品のおしまいで加古さんは「東日本大震災で被災された方々への鎮魂と慰霊、そして原発事故への警鐘の念をこめて作品とした」としたと記されました。
まさに加古さんの最後のメッセージといえます。