柳原良平さんの絵本を辿っていて出会った本です。
柳原さんの軽妙でシンプルな絵で、さらりと描かれているのですが、ばいかる丸という一隻の船を通して、日本の歴史を辿る深い思いを受取りました。
大正10年に完成された5243トンの当時の豪華客船は何をしたでしょう。
中国大連と日本を往来する、満州との橋渡しをしてきたのです。
その後戦争が始まり、軍に徴用されて病院船へと変身します。
新しい船が大型化する中で、中型船として扱われたから軍艦とはならなかったのが、幸いだったのでしょう。
機雷と接触して挫傷した船は、紆余曲折して捕鯨母船となり、さらに捕鯨肉を運ぶ冷凍船に改装されます。
船はこのように、作り変えられながら、日本の歴史を刻んできたことに改めて痛感しました。
船にこだわりがある柳原さんだから描けた絵本であり、正確に伝えようとする姿勢が、この絵本に重厚感を加えています。
移民政策、戦争、捕鯨、日本の歴史を海の側から語ってくれたばいかる丸ですが、どれもが終焉を迎えます。
あまりに気にかかってその後を調べたら、この復刻版が出された数年後、1968年に解体されていました。
47年の人生でした。
感慨ひとしおに、自分の人生を振り返ります。