“さるかに合戦”の大元は「かにむかし」だと思い込んでいましたが、この作品を読んでそもそも江戸時代には存在していたんだということを知りました。
いわゆる古典の昔話は、終わり方が唐突だったり、意外と残酷だったりするイメージがあり、違和感を覚えることもありましたが、この作品は、渋柿を投げられて怪我したカニの仇を取ろうと集まった有志の活躍により、最後には捕まった猿がカニの前に土下座をして謝るという、筋の通しかたを教えられるような展開と、清々しい読後感で、現代でもしっくりと読むことができます。
しかし、この絵本の最大の特徴である登場人物の容姿には、多くの方が始め違和感を覚えるかもしれません。
悪者である猿はケモノの容姿をしていますが、仇を討つ側は皆一様に人間の体の上に、ハチやウスやらクリの顔が乗っかっていて、学芸会のひとコマを見るようで、笑ってしまうかもしれません。それでいて実に写実的で、古い絵巻物を見ている様な気分でもあります。
「かにむかし」を読んで内容を知っている息子も始め、擬人化された登場人物に戸惑い気味でしたが、お話しの内容や方言、独特の言い回しは知っているものと変わらなくも、カニがつぶれて死んでしまう怖いところがないところも受け入れやすかったのか、自分なりに二つの話しを見比べながら聞いている様子でした。
また、あとがきを読むと“さるかに”の裏側を知るような解説があってとても参考になります。古典もののシリーズのようなので、他の作品も是非読んでみたいと思います。
他の“かるかに”と比較して読んで欲しい作品です。