とても素敵な絵本です。
安房直子さんは私にとって、特大に特別な作家ですが、最近絵本になって再び日の目を見る作品が次々に出てくるので、嬉しい限りです。
『雪窓』は、季節が冬で、冷たく物悲しい雰囲気がありますが、その中にほっと温かいものが流れてくるようなお話です。
静かに丁寧な文章で語っていく中に、時々どきっとするような文が出てくるので、聞いている子どもたちは、目を離そうとしても、すぐに引き寄せられてしまいます。
ひとりぼっちのおでんやのおやじさん。いつしかおやじさんの助手になって寄り添うたぬき。そして10ねん前に亡くなったおやじさんの娘の美代。
みんなが心のどこかでしっかりと結びついて、それが熱いおでんのように、読んでいる人の心を暖めてくれます。
挿絵は空気の冷たさや、雪の夜の暗さや静けさが伝わってくる素晴らしいものですが、6年生の娘は、「このお話には絵がない方が、想像が広がって良い」という感想でした。
私はどちらも良いと思います。
自分で読んでも、人に読んでもらっても、絵を見ても、文章だけでも、とにかく読んでほしいお話です。