きっと私たち日本人の多くの人が、
意識しているかどうかはともかく、
詩人谷川俊太郎さんの言葉に接してきているような気がする。
詩集で、教科書で、新聞で、雑誌で、
そして絵本で。
谷川さんは60年代から現在に至るまで200冊以上の絵本に
携わってきました。
つまりは、とても多くの画家やイラストレーターの人たちと一緒になって
つくってきたことになります。
そんな谷川さんの活動を「絵本・百貨店」として展示するイベントがありました。
そのイベントを記念して復刊された絵本の一冊が
この『まるのおうさま』です。
絵を描いているのは、粟津潔さん。
もともとは1971年に「かがくのとも」の作品として生まれて、
その後2019年に絵本として刊行されています。
そして、2023年4月に復刊されました。
印象的なのは、粟津さんの独特な絵と色づかいです。
たくさんの「まる」が出てきますが、どれひとつ同じではない。
そんな絵が続きます。
粟津さんについては少し注釈が必要かもしれない。
粟津さんはグラフィックデザイナーで、2009年に亡くなっています。
最近の絵本で粟津さんのようなタッチの作品を見ることは少ないですから
案外面白い感覚かもしれません。
この絵本では谷川さんの文もいいけれど、
粟津さんの絵の迫力がまさっているかもしれません。
きっと谷川さんはそんな絵との競争も楽しんでいたのではないでしょうか。