『木の耳』は、中国絵本館シリーズの第二弾として、ヤン・ホンインとエレーヌ・ルヌヴーの才能が再び結集した作品です。この絵本は、一本の枯れ木が耳を得ることで、周囲の世界を新たな目で見るようになる物語を描いています。木に耳が生えるというユニークなコンセプトは、「木の耳」として知られるキクラゲにインスピレーションを得ており、木が聞くことで自身の存在意義と再生の力を取り戻す様子を美しく表現されています。
物語を通じて、木はかつて自分が鳥や昆虫、動物たちにとってどれだけ大切な憩いの場であったかを知ることができます。それぞれのキャラクターが木に対して抱いていた感謝の思いが、木に新たな生命を吹き込む力となるようです。エレーヌ・ルヌヴーによる絵は、その緻密な筆致で木の幹に隠された動物たちや自然の細部を鮮やかに描き出しており、子どもたちにはそれを探す楽しさが、大人にはその芸術性が魅力的に映ると思います。
翻訳者の中由美子さんが手掛ける洗練された言葉選びも、この絵本の読みごたえを一層深めています。言葉と絵が織り成す調和が、読む者に心地よい読書体験を提供してくれます。特に、再生と希望のメッセージは、すべての年代の読者にとって共感を呼ぶものであり、自然との繋がりを再確認させてくれる内容となっています。
この絵本は、見た目がシックなため、小さな子どもたちが一瞬手に取りにくいかもしれませんが、もう少し成長した後に改めて読むことで、その深いメッセージや美しいイラストをより深く理解できるようになるかなと思います。