最近、宮沢賢治の絵本をよく手に取りますが、どれもこれも、物凄く力が入っているような気がします。
この本も、また然りです。
とにかく挿絵が素晴らしいのです。
楢夫が、大きな木の幹に、三つの白いきのこ(さるのこしかけ)を見つけたところから話が始まります。
このいかにもさるが腰掛けそうなきのこに、次のページでは見事にさるが腰掛けていて、それがまたぴったりなので、この瞬間に物語に引き込まれてしまいます。
さると楢夫の駆け引きというか、ちょっとしたガリバー旅行記風のお話が展開されますが、さるの表情がとても豊かで、こんなさるにはついヨロヨロと付いて行ってしまうだろうなと思われます。
このさる、最後には結構悪さをするのに、最後までどこか憎めない、いい味を出しています。
悪さも、本当はふざけただけなんだよね?と思いたくなるほどです。
飄々として、つかみ所がない様なお話ですが、絵の素晴らしさに引きずられて楽しく読める絵本です。