表紙からして、「すてき?」と疑問いっぱいになりそうな絵本です。
この絵本を見るたびに思い出す、忘れられないエピソードがあります。
年長のクラスでこの絵本を読んだときに疑問を投げかけた子どもがいました。
「すてきじゃないよね?いいことしても、人のものを取ったらダメだよね?」
その一言で、議論となりました。
「かわいそうな人にあげてるんだから、いい人だよ」
「取ったものもらっても、うれしくないよ」
みんなそれぞれに言い分があるようでした。
子どもたちがとまどっているのを見ると「この絵本を読まないほうがよかったんじゃないか。泥棒をしてもいいと、変な認識を持ってはいないだろうか」と、はじめは後悔しましたが、何日かたつと、この絵本を読んでよかったと実感しました。
みんなそれぞれに、自分の意見を伝えようとする力がついたと思ったからです。
本当にすてきなのか、と聞かれれば、大人の私でも答えに詰まりますが、子どもたちはきちんと筋立てて、どうしてそう思うのかを伝えようとしていました。
「すてきないい人だ」と言った子どもも、「でも、泥棒はダメだよね」と、善悪はきちんと理解していました。
子どもたちに善悪を考える機会を与える、すてきな絵本だと思いました。