2006年のコールデコット賞オナー賞受賞作品。
ニッキ・ジョヴァンニ/文、ブライアン・コリアー/絵による作品で、「リンカ−ンとダクラス」でもコンビを組んでいます。
ローザ・パークス(Rosa Parks、1913年2月4日 - 2005年10月24日)はアメリカ合衆国の公民権運動活動家。
1955年12月1日。
ローザは、アラバマ州で公営バスの運転手の命令に背き白人に席を譲るのを拒み、人種分離法違反で逮捕されます。
これを契機にモンゴメリー・バス・ボイコット事件が勃発。
その出来事を描いた実話に基づく絵本です。
ローザは、アラバマ州のモンゴメリーのデパートで、服の仕立てや修理の仕事をしていました。
ある木曜、仕事の帰りローザはバスに乗りこみます。
当時のアメリカ南部州には、ジム・クロウ法(Jim Crow laws)と呼ばれる人種分離法が施行され公共交通機関を除く日常生活のあらゆるところで黒人と白人は隔離されていました。
バス・レストランなど公共の場所で人種隔離が実施され、また黒人の投票権も事実上制限されていたのです。
バス内は白人席と黒人席に分けられ、中間席はどちらが座っても良いことになっていました。
黒人席が一杯だったのでローザが中間席に座っていると白人が乗って来始め、立つ者も出てきたのです。
そのため運転手が、中間席に座っている黒人に立つよう命じます。
坐っていた黒人4名中3名は席を空けたが、ローザは立たちません。
運転手は、ローザのところにやって、
おとなしく立ったほうが身のためだぞ」と言うと
「どうして、わたしたちを差別するんですか?」
と答えます。
運転手の「警察をよぶぞ!」との脅しにも、
ローザは「おすきなように」と穏やかに答えるのです。
極めつけは、やってきた警察官の「おばちゃん、席を立つつもりでいるんだろう?」との尋問への答えです。
ローザの答えは、「ノー」
ローザは逮捕され、その知らせが伝わると、大きなうねりとなります。
マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師、女性政治会議、全米黒人地位向上協会などが中心となり、モンゴメリーにおける黒人のバス・ボイコット運動が展開します。
当時のバスは、貧しい黒人にとって必須の交通機関。
でも、崇高な思いをもって、毎日歩き続けたのです。
やはり、ローザが「ノー」と言った勇気に、何としても応えて自らの地位、尊厳を確かなものにしたいという思いが、何事にも勝ったということなのでしょう。
バス路線を運営するモンゴメリー市は経済的に大きな打撃を被り、1956年11月13日、最高裁判所は違憲判決を出し公共交通機関における人種差別を禁止することになるのです。
今や、バラク・オバマという黒人の大統領を輩出しているアメリカですが、ここまで辿り付くのに、どれほどの大きな時間を要したのか、知らないとなりません。
私自身、このモンゴメリー・バス・ボイコット事件を知りませんでしたし、アメリカに差別の歴史があったということを知る機会は減っていくだけだと思います。
1955年ですから、私達が生まれる一寸前に、これだけ明らかに黒人に対する人種差別があったという事実。
しかも、そんな時代に、黒人のしかも女性が、きっぱりと「ノー」と言ったというのは、どんなに勇気がいたことだろうと感銘せずにはいられません。
日本は島国であったことから、人種問題もなく人は平等だと当たり前のように思っています。
勿論、貧富の差はあれど、子供でも、平等と考えているはず。
けれども、世界を見渡せば、差別のあった歴史を持つ国は多く、差別がある国はまだ存在しているのも事実です。
子供達には、是非こうした現実を知って欲しいし、この絵本はその教材としてはベストに近いと言えると思います。
見開きにして4ページにわたるボイコットのシーンは、圧巻。
そして、ローザのきりっとした目は、強い意志が感じられるもので、実に物語に相応しい絵だと思いました。
子供だけでなく、大人にも読んで考えて欲しい作品としてオススメします。