親もとを離れて旅に出る子牛が、自分はもうじき食べられるのだとわかっていたら、もうじき死ぬのだとわかっていたら、どんな心持ちなのでしょう。
受けいるしかない宿命を、自ら納得させようとする姿が、これでもかというほどに繰り返されます。
見る側の人間を吸いこんでしまうような、はせがわゆうじさんの絵のタッチにやられました。
旅立つ子牛の乗った電車を追いかける母親のシーン、「せめて ぼくをたべた人が 自分のいのちを 大切にしてくれたら いいな」という独白と言葉の間に、とどめを刺されました。
それでも食べられる子牛の肉を食べる人間として、せめて命をいただくことの感謝を忘れてはいけないと感じます。
絵が能弁に語っている絵本です。