表紙のカラースチール写真を見て、扉を開くと白黒映画の世界
若干ハイキーな写真とざらつきを意識したコントラスト。
つくづく、この手法は写真家の業だと感じるのですが、登場する少年たちとおじいさんの心の内をとても鮮明に表現して、ドラマ性を高めています。
少年があこがれたヴァイオリンを手に入れるためにためた「貯金箱」。
さあヴァイオリンを買いに行くのだという高まりと、あこがれたヴァイオリンがとても買えないほど高価なもんだと知った時の落胆。
手に入れたヴァイオリンが耳障りな音しか出さないことに対する怒り…。
ダニーの心象を言葉以上に写真が表現していて、ストーリー性のある写真は、映画のスチールをつなぎ合わせているようです。
ヴァイオリンが悪いのではなく、自分の腕が未熟なのだと教えてくれたのは不思議なおじいさん。
おじいさんの不思議な存在が、この「映画」のとても大きなポイントです。
ダニーと仲良しのクリスとのふざけ合いで壊してしまったヴァイオリン。
自らのヴァイオリンをダニーに渡して、去っていくおじいさん。
すっかり映画の絵本化だと思ってしまいました。
ドラマのような写真物語、ミゴトです。