大阪の人はしばしば「けったいな」という言葉を使う。
「ほんま、けったいやな」みたいに。
この「けったい」はちゃんと『広辞苑』にも載っている言葉で、「上方方言」とある。
「風変わりさま。不思議なさま」と説明されている。
さしずめこ中里和人さんの写真絵本『こやたちのひとりごと』は、「けったいな」絵本だ。
だって、さまざななところに放置されている「小屋」だけを載せた絵本なのだから。
でも、どうしてだろう、
これらの「小屋」を見ていると、「けったい」なんだけど、
なんだかとって懐かしいようで、ずっと見ていたい気持ちになってくる。
本当に何の変哲もない、放っておかれた「小屋」なのに。
この絵本は、写真家中里和人さんの「小屋」の写真に、
詩人の谷川俊太郎さんが文をつけている。
たとえば、こんな風に。
「むかしから ずうっと ここにたってる/どこかにいきたいと おもったことはない」
たとえばまた、こんな風に。
「ぼくは ひとりで/ぽつんと たってるのが すき」
「小屋」の「ひとりごと」みたいだけど、
でもこれは写真を見て、感じて、言葉になった谷川俊太郎さんの「ひとりごと」。
だったら、この絵本を読んだ人にもできるはず。
自分が「小屋」になった気分で言葉にしてみよう、「こやたちのひとりごと」を。
自分だけの「ひとりごと」を。