かあさんであるいちょうの木のもとを離れて、いちょうの実であるこどもたちが旅立つ前夜から旅立ちの瞬間までを綴ったお話。
及川賢治さんの挿絵のいちょうの実は、「こんなに幼かったら、準備も大変だし、かあさんもいろいろと心配だよね。」と納得のいくあどけなさ。みんな揃って出発するにしても、持ち物や、心構えや、何かと気になることは山のよう。
木から旅立つ・・・というと「葉っぱのフレディ」を思い出しました。フレディは木の上でもっと多くのことを経験してから落葉になるので、子どもたちの感覚とはまた違いますが、木の葉も木の実も一つ一つに気持ちがあるのなら、自分の未来を案じたり、いろいろなことを想像してその時が来るのを待っているのでしょう。
旅立ちは喜んで見送ってあげたいけれど、こどもたちの身を案じるおかあさんは、悲しみのあまりに素敵な扇形の金色の髪をすべて落としてしまっていました。
自然の営みは時に厳しいものなのですね。無情に実を落とす強い北風と、そんなこどもたちやかあさんの気持ちを思いやって照らし続けてくれるお日様が対照的でした。