正直なところ、賢治の話は私にとっては難解です。とくに、この『やまなし』ほど、難しいものはありません。すらっと読み終えれてしまうのに、頭の中にはその情景しか思い浮かんでこず、一体何が言いたいのかが、はっきりとつかめないんです。
このミキハウスのシリーズの『やまなし』の絵を見ていると、その淡い色使いの日本画のような絵が、ますます幻想的に話をみせてくれ、美しいなぁと自然と思えてきます。そして、カバーの見返しに書かれていた「小さな谷川の底でくり広げられる、生命の巡り。生と死はつながり、やがて豊かな実りがもたされる。」という言葉を読み、やっと、なるほどそういうことを伝えたかった話だったのねと、心の中にストンと落ちたように納得しました。