勢いのある筆致が特徴の、長谷川先生ご自身の亡きお父様へ捧げる一冊。
天国のお父さんへの手紙の形式で、10歳の先生が描かれています。
お父さんとの数少ない思い出を大切になさってきたことがわかります。
お父さんの死によって、周囲はたくさんの気遣いをしてくれますが、たくましく、優しく、強く育ってきた長谷川少年が、頼もしいです。
小学校の図工の時間に“父の日”が近いから、お父さんの絵を描くシーンがあります。担任の先生は、父を亡くした長谷川少年に、「お母さんの絵でもいいんだよ。」と声を掛けます。
ここを読んだとき、私の小学校時代がよみがえりました。その日は、母の日にむけて、「母」という題で作文を書いていました。
クラスの中で、一人鉛筆を持たない男子がいて、先生が「書きなさい!」と、声をあらげていたのです。先生はその子の家庭事情を知らず
あとで謝ったようですが、初めてわたしは色々な事情の人がいるんだなと気づきました。
そして、母の日とか父の日は、家庭の中だけで良いのではと幼心に
思いました。
この一冊は、家で息子としんみり読みました。
彼は、自分の身に置き換えて、「強いな〜。」としみじみ語っていました。
対象は3年生くらいからでしょうか。
大人の方も、昭和の情景を懐かしみつつどうぞ。