正直に白状してしまえば、「好み」によって「評価」が大きく分かれてしまうものだと思います。
トレーシングペーパーを使い、霧の中を表現した作者の意図は成功しています。重なりあうトレーシングペーパーは深い霧を思わせ、ページをめくるたびに、サーカスへ近づいていっていることがわかります。
サーカスでは一転して、色紙を使い、サーカスの色彩溢れる楽しさが伝わってくるとともに、切り抜かれた大小の円や半円がサーカス芸に動きをつけくわえています。
この本を訳した谷川俊太郎が、あとがきでムナーリの次のような言葉を引用している。「芸術作品を理解するときの最大の障害は、わかりたいという<欲求>である」。
「わかろうわかろう」すればするほど、この本は自分から離れていくように思います。あたまがガチガチで使い古された価値観に支配された大人よりも、何の先入観ももたない子どもたちの方が、この本の本当の良さが伝わるのではないかと思います。まったく、悔しいことです。