絵の美しさに惹かれます。露草の花のような青紫色のうえに描かれた左右・上下が対称の表紙、見返しには赤色のうえに金色の細い線で円状に描かれた多くの動物たち、そして白地の扉には主人公を中心に金の線で木が大きく枝を広げています。どの絵もとても細かく、顔を本に近づけて見入ってしまいます。
作者であるデミの紹介文には、「伝統的な『インド細密画』を取り入れ、コンピューターを使ったレイアウト」と記されていました。そう言われて見ると、この絵本全体が精密さと規則性をあわせ持っていて、それがより美しい絵を生み出しているのがわかります。
この絵本の内容は至って簡単、村娘のレーニが、とんちを使って王さまの悪政から村を救うというお話です。ただ、そのとんちがおもしろいのです。1つぶのお米を30日後には10億つぶにしてしまうのです。お米が増えていく様子が詳しく描かれていて、30日目に256頭の像が並んでいる見開きのページと、お米の山に子どもたちや動物たちが埋まっている絵には圧倒されてしまいます。
サブタイトルが「さんすうの むかしばなし」となっていますが、算数が苦手な子も楽しめるお話です。このお話の壮大さをみんなで楽しんでもらいたいと思います。