私が生まれた大阪・岸和田は泉州とも呼ばれているのですが、そこにはおいしい水ナスという野菜があります。
私が子どもだったうんと昔、水ナスなんていつもあった、どこにでもある(と思っていた)野菜だったのですが、今や全国的な名産品のひとつになっています。
東京で買おうと思えば、百貨店に行かないといけない。
おいおい、水ナスがそんなにえらくなってどうするの? みたいな気持ちですが、おいしいのだから仕方がない。
ナスは野菜の中でも料理のバリエーションの多い方です。
この絵本の裏表紙の中に、「茄子料理づくし」が載っています。
茄子のぬか漬け、米茄子の田楽、焼ナス、麻婆茄子、など、たくさん、たくさん。
それにナスはその色がいい。
独特の紫色。
あんな顔色をした人がいたら驚くでしょうが、この絵本の主人公なすの与太郎じいさんは、ナスですから紫色の顔をして、頭にちょうんまげのようにヘタをのせています。
様になっているから不思議です。
ある日、与太郎じいさんは孫の小茄子ちゃんに昔話をせがまれて、自身の弓の修業の話を始めます。
子どもたちは知らないかもしれませんが、昔那須与一というたいへん有名な弓の名手がいたので、ナスつながりの話になっています。
奇想天外な与太郎じいさんの話が終わったあとに、近所に住む茶人千休利さんがたずねてきます。
キュウリというだけあって、顔は長く、まさにキュウリ顔。
しかも、この休利さんは、昔の茶の名人千利休にかけています。
この二人のことを紹介するだけで、この絵本の面白さがわかるような気がします。
ナスが嫌いという子どもに、ナスの美味しさをわかってもらうのに、与太郎じいさんの話はいいかもしれません。
ナスの色であったり、形であったり、色々な物語ができそうな気がします。
野菜は身体にいいし、なによりも生産者さんの気持ちがはいっています。
こういう絵本を読みながら、野菜に親しんでもらいたいと思います。
今年も故郷から水ナスを頂戴しました。