『病気の魔女と薬の魔女』の続編。
最先端の感染免疫学の医学博士が書き下ろしたということで、
良質の科学ファンタジーになっているのは前作と同じです。
主人公は引き続き、修行中の薬の魔女、ローズ。
新型インフルエンザがまさに現実となっていた時期に書き下ろされただけあって、
迫力に満ちているような気がします。
前作ではワクチンがメインテーマでしたが、ワクチンが間に合わなかった現実から、
今回のメインテーマは抗生物質。
なかでも、時間をさかのぼり、ペニシリン発見の過程を、
ローズと一緒に体感した気分でした。
加えて、戦争の不条理さも、しっかりと描かれます。
病気の魔女たちの、戦争への憎悪の気持ちは、共感できました。
抗生物質は、人間が叡智と勇気と努力で獲得したもの、ということが
よくわかりました。
ともすれば、暗いストーリーになりがちですが、
ローズの明るさ、頑張りには元気をもらうことができますし、
森のお菓子の家の魔女などが登場することで、
おいしそうな菓子類がたくさん登場するのもポイントが高いと思います。
カフェの調度はもちろんのこと、魔女たちの世界の情景描写が細やかで、
とてもイメージがつかみやすかったです。