長い石の階段をはさんで、上には桜の木、下にはコンクリートの電信柱が
あります。主人公のたっちゃんは、毎日何回もここを往復します。
ある時、下のコンクリートの電信柱の前でロウセキ(チョーク)を拾い、
思わず電信柱に顔を描くと、電信柱が話し始めました...
という話です。
小学校の国語の教科書に載っていた『龍宮の水かめ』を読んで以来、
私自身には佐藤さとるさんの話が何ともいえない魅力があって、
見かければ必ず手に取るという感じでしたが、
この本は、今回『おおきなきがほしい』で、佐藤さとるデビューを
した子供の為に、図書館で見つけた本の中の1冊でした。
この“たっちゃん”って、ひょっとして幼少の頃の佐藤さとるさんの投影?
と、ふと感じました。
その辺によく見かける電信柱にスポットをあて、その電信柱が
一度も直接見たこともない山の上の桜の木に、長い間、思いをはせて
いるなんて、すごい感性だなと思います。
その電信柱の口を借りて、四季の移り変わりを語るところが
大変美しいです。
我が家の近くの電信柱も、ひょっとしたら、顔を描いてもらって
話せるようになるのをじっと待っているのかな?!
でも、このあたりの電信柱だったら、カラスの愚痴を聞かされそう
だけれど....