字が読めることは、今の日本に住んでいると、ある一定の年齢になると学校に行くのが
当たり前で、そして字を習い、当然のように読むことが出来るようになり、極普通のこと
のように感じてしまいます。
でも、残念ながら世界のどこかではまだまだきっと、そうではないのかもしれません。
この話は、19世紀後半のアメリカの黒人の男の子(後に教育者になるブッカー・T・ワシントン)
が主人公で、どんなに字が読めるようになりたいか、そして初めて字を読んだ時の喜びが
ものすごく伝わってくる本でした。
それはクリス・K・スーンピートさんの絵が更に効果的にしてくれていると思います。
この本の中で私が2箇所、心に残ったのが、
岩塩の仕事場から帰ってきた時に勇気を持って、お母さんに「ママ、ぼくは字をならいたい」
と伝えた時、お母さんは何も答えず、「ママはぼくの手をにぎりしめた。」と書いてあり、
それから何日かしてお母さんが、僕に生まれて初めて本をプレゼントしてくれた時の挿絵が、
とても印象的でした。
お母さんが微笑んでいるのです。そして、他の家族も、まるで、主人公の僕が字を読める
ようになることに自分たちの希望や夢を見出しているかの様な笑顔をしているのです。
きっとこの家にとっては、その本を入手することは経済的に決して簡単なことではなかっ
たでしょうに..
もう1つは、その本を持って、字が読める唯一の知り合いを探しに行って、読んでもらい、
そして自分も一緒に初めて読んだ時の挿絵が、まさに僕の喜びそのままを描ききっている
ところです。あの笑顔は忘れられません。
まるでこの本は、導かれるように辿りついた本でした。最初に『わたしのとくべつな場所』
から始まり、『ぼくの図書館カード』、そして、この『ぼくが一番の望むこと』。
それは、他の方のレビューのお陰であったり、また絵本ナビの「この本を見た人はこの本も
見ています」コーナーに載っていたお陰です。
是非、読んでみてください。とても、ジーンとくる本です。