私が初めてスイミーに出会ったのは小学生の国語の教科書だったと思います。
小さな赤い魚たちが、大きな魚の形で泳ぎ、
1匹だけ黒いスイミーが「ぼくが、めになろう」と言う場面で
「すごい!」と思ったのを、良く覚えています。
みんなで力を合わせれば大きな力になることを教えてくれた物語でした。
大人になって、もしかしたら初めて?絵本を読んで、驚きました。
自分が覚えていた感じと、絵の印象が随分違うのです。
物語の初めから、沢山の赤い魚の兄弟たちとスイミーが泳ぐ
光あふれる、色鮮やかな海の絵の、なんて楽しげなこと。
それだけに、兄弟たちがまぐろに食べられた後、
色を失ったような海に泳ぐスイミーの孤独が胸に迫ります。
けれど、そんな彼を勇気づけたのは、海の素晴らしいものたちでした。
特に、こんぶやわかめの絵の美しさには見とれてしまいます。
生き生きと描かれた海の仲間たちは、
悲しみに沈むスイミーに、
それでもやっぱりこの世界は美しくて、生きる価値があるのだと教えてくれているように感じました。
だから、今は「ぼくが、めになろう」という言葉に
「かしこいさかな」に成長し、
悲しみを乗り越え、仲間とともに生き抜いていこうとする彼の決意を感じて、
ちょっと泣けてしまいました。
スイミーが長く多くの人に愛されている理由は
こんな風に、読む人が、その時々に自分の気持ちを投影できる
懐の深さにあるのかもしれませんね。
昔読んだなぁとか、教科書で知ってるよという人にも、もう一度
ぜひ、絵本で出会って欲しい作品です。