斎藤・滝平作品の中で、この作品はお話の構成・展開が素敵だと思います。
扉絵で、主人公のあやが山へ入って山菜取りをしに来た事がわかります。
開いて、突然山ンばの語りが始まり、一気に惹きつけられます。
その語りの朗々とした文に読者は瞬くとりこになり、先へ先へとこの山ンばの話に聞き入る事でしょう。
そして、あやが今まで見た事も無い綺麗な一面の花のページの絵に読者も魅了されます。
自分の事より人のことを思い、辛抱するその優しさや健気さで咲くという花に、確かにこんな風に見えたら素敵な眺めで、さらに『自分も善行を・・・』という気持ちにさせてくれるおはなしです。
読み終えて、表紙絵を再び眺め、あやの浴衣の模様の意味が読者に改めて伝わってくる心憎い作りです。
花さき山の花は、今の世にどれだけ咲いているのでしょうか?
昨日より今日の方が花数は増えているのでしょうか?
この世に生を受けたものとして、他者の力になれる喜びを知り生きて行って欲しいと息子を眺めしみじみと思いました。
そのためには、辛抱・忍耐、これこそが真の強さ、そして真の優しさである事をゆっくり伝えて行きたいと思いました。