奥深い(と思われる)山に1人住み、人々から畏れられている山ンばは、実は人間のやさしさやけなげさのあふれる行為を見守っている。それは山ンばと会話をしている小さな少女の家計や家族を思うけなげな言動だったり、お母さんのおっぱいを飲むあかちゃんのいじましさだったり。すぐそばにいる家族ですら気づいていない小さな、でも立派な心がけに対し、敬意を払って見守り、その証として花を咲かせている。民話調の語りと見事な切り絵で、本当なのか架空のことなのかわからないような一種不思議な世界にひきこまれます。一見、小さな子どもには不向きかと敬遠されるかもしれないけれど、私の子どもは幼児の頃にこの絵本に出会いずっと好きで手放せません。心の奥深くにこの世界観や作者のメッセージが刻まれているように思うので、ぜひ一度手にとってみてほしいと思います。私も、花さき山に1つでもいいから花を咲かせてみたいと思いながら暮らしています。