タイトルからコミカルなお話かと思い読みましたが、とてもまじめなメッセージの詰まった作品でした。
人間の自然破壊のとばっちりをくう熊。
冬眠している間に森の木は切り倒され、人間がだけが恩恵を受ける為の工場が建てられてしまっていました。
春に目覚め、跡形もなく消えた森に呆然としている熊。
そこへ工場の職長がやって来て「とっとと仕事につけ」
「ぼくは くまなんだけど・・・・・・。」と答えても一蹴され、人事課長、副工場長、工場長、社長までまわされ、終いには熊であることの証明を求められ、人間に飼い慣らされた動物園やサーカスの熊たちに面談するも、仲間じゃないと拒絶され、・・・。
ここまで読んで、自然破壊への警鐘だけではないメッセージも感じました。
突然遭遇した悲劇の前に、大きな力に抗う術もなく、「これで良いのか?」という自問自答を繰り返す日々の熊の姿に、日常の中にかつて抱いていた大志が埋もれて行くことに不満を押し殺し暮らしている人間社会の縮図を見る思いもしました。
さらに、冤罪で捕らわれた人・大きな誤解を受け一人弁解に回りようもない世の中の冷たい目にさらされる不幸に襲われた人の姿も想像してしまいました。
世の不条理に流されて、嫌と言うほど知らされる己の非力さ、そして空しさが熊の言葉から伝わって来ます。
まずは、自然の恵みに対する人間の傲慢な奪取についてへの強い抗議として受け止め、再読しました。