子どもに読み聞かせるには少々長いお話ですが、最後まで読むと、1本の映画を観たような充実感がありました。
ちいさいおうちが建てられた当初は、自然がいっぱいののんびりと穏やかな場所でした。年月が経つにつれて、道路が作られ、ビルが立ち並び、電車が走るようになり、人が増えて空気も汚れていきます。夜空も、咲いているお花も、季節でさえも感じ取れなくなって様変わりしていく風景は悲しくもせつなくもあります。
「街」そのものが悪なわけではないけれど、行き過ぎた利便性を憂いているのでしょうか。後戻りのできない現実は、ちいさいおうちの引っ越しというところでも表されています。その場所から移動しない限りは変えられない環境。とても深いお話だと思います。
感情に訴えかけてくるような、バートンさんの絵も本当に素晴らしいです。娘たちにとっては続けて何度も繰り返し読むタイプの絵本とは違うようですが、それぞれに思うところがあったらしく、この先成長していく過程でさらなる良さを実感してもらえるような気がしています。