中学生までに読んでおきたい日本文学(1) 悪人の物語」 夏の雨さんの声

中学生までに読んでおきたい日本文学(1) 悪人の物語 編:松田 哲夫
出版社:あすなろ書房 あすなろ書房の特集ページがあります!
税込価格:\1,980
発行日:2010年11月
ISBN:9784751526217
評価スコア 4
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  • 『中学生までに読んでおきたい日本文学1 悪人の物語』(松田哲夫 編)
     全10巻からなるこのシリーズのこれが最初の巻ですが、
     そこにあえて「悪人の物語」をもってくるのがこのシリーズの面白さともいえます。
     各巻に編者である松田哲夫さんの「解説」がついていて、
     今回その中で松田さんはこんなことを書いています。
     「人類が考えたり楽しんだりするために生み出した文学にとっても、
     悪の問題は決して避けて通ることができない重要なテーマ」であり、
     「多くの書き手は、悪をとても魅力的なテーマだと考え」てきたと。
     最近の作家たちも「悪」をテーマに多くの作品を残していますから、
     これからもなくならない文学の大きなテーマです。

     シリーズ1巻めとなるこの本に載っている作者と作品は以下のとおり。
     山村暮鳥   げい語(詩です。タイトルの「げい」は正しくは漢字表記です)
     森銑三    昼日中/老賊譚(泥棒のお話)
     芥川龍之介  鼠小僧次郎吉(芥川はこんな面白い短編も書いてます)
     中野好夫   悪人礼賛(ちょっとハスに構えたミニ論説文)
     野口冨士男  少女(誘拐を扱ったもので、ラストが印象的な作品)
     色川武大   善人ハム
       (かつてはこの物語に出てくるような馬鹿正直でちっとも得をしない男がいたもの。
        色川さんは麻雀小説を書いた阿佐田哲也としても有名)
     菊池寛    ある抗議書(菊池寛は大衆文学かと思っていたが、これはシニカル)
     小泉八雲   停車場で(怪談だけではない、八雲の魅力)
     吉村昭    見えない橋(刑期を終えて更生する男を描いた作品で、吉村さんが大切にしたテーマ)
     柳田国男   山に埋もれたる人生ある事(わずか3ページながら余韻が残る)

     この巻では色川武大さんと吉村昭さんの作品がおすすめです。

     読書の面白さを堪能あれ。

    投稿日:2023/10/05

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