新刊
どうぶつのわかっていること・わかっていないこと

どうぶつのわかっていること・わかっていないこと(小学館集英社プロダクション)

「答えのない問いに向き合う力」をはぐくむ新感覚の絵本

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名前のない人」 夏の雨さんの声

名前のない人 作・絵:クリス・ヴァン・オールズバーグ
訳:村上 春樹
出版社:河出書房新社
税込価格:\1,980
発行日:1989年
ISBN:9784309261195
評価スコア 4.68
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みんなの声 総数 18
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  •  「どれだけ長く眺めていても飽きるということはない」。
     これはC.V.オールズバーグの絵本についての、村上春樹さんのコメントです。
     そういう絵本にめぐりあった村上さんのおかげで、私たち読者もオールズバーグの独特な色彩の世界を楽しむことができたのですから、本というのは巡りめぐるものだと、つくづく感じます。

     この作品は、村上さんが『西風号の遭難』『急行「北極号」』につづいて翻訳をした作品です。
     「ミステリアスでエニグマティック」な作品だと村上さんは評しています。
     「エニグマティック」というのは、「謎めいた」という意味でしょうか。
     原題は「The Stranger」。
     表紙の黄色い服、デニムのつなぎを着ている男が、その人物です。
     スープをみつめる表情にして、少し「エニグマティック」です。

     ある日、お百姓のベイリーさんが車で事故を起こしてしまいます。
     はねたのが、この男。事故のせいか、ベイリーさんが何をたずねてもわからない様子。
     やがて、元気になった「名前のない人」ですが、どうも普通の人とは違うようです。
     ベイリーさんの農作業を手伝っても汗ひとつかかないのですから。
     しかも、この男のまわりに不思議な現象が起こりだす。
     いつまでも夏が続いて、秋が来ないのです。
     まわりの村や山々は秋の色づきにそまっているのに、ベイリーさんの村だけは、いつまでも夏なのです。
     この男は、いったい何者?
     やがて、男はいなくなります。途端に、ベイリーさんの村にも秋がやってきました。
    「 エニグマティック」は、こんな時に使うのでしょうね。

     最後までこの男のことは解き明かされません。
     私たちは秋の装いに包まれたベイリーさんの家をじっと見つめるだけです。
     めぐる季節のことは科学的には説明できます。でも、本当はこの男のように、不思議な自然のなぞなのかもしれないとい うことを、私たちはすっかり忘れてしまっているような気がします。
     「The Stranger」とは、自然そのもののことかもしれません。

    投稿日:2014/08/24

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