ある日、水色のたまごを見つけたうさぎさん。中には何が入っているのかな、と想像を駆け巡らせます。男の子かな、うさぎかな、ぞうかな、ねずみかな。殻を割ろうと、どんぐりを投げたり、転がしたり、(少々乱暴ですが)小さな石をぶつけたり――。疲れて果てて眠りに落ちると、その間にピシッ、ピシッと殻が割れ始めました。
お話自体は他愛のないものなのですが、子どもはこの絵本が大好きです。その理由は、かわいい動物たち以外に、「たまご」の存在にあるのかもしれません。中から何かが出てくるというプロットは、子どもの興味を大きく引きつけるもの。なので「たまご」は、それだけですでに心を魅了する対象なのでしょう。さらに日常では食べておいしいし、見た色も形も美しいし、触ってころころ動くし、子どもに近い関係にあるからこそ、「たまご形」が視覚に入ると安心してしまうのかも。というのは、どのページも大きなたまごの型抜きの中に物語が描かれているのです。
中から出てきたばかりのおともだちが目の前にいる動物を即「うさぎ」だと認知した不自然さ……など、わたしは余計なことを感じてしまうのですが、娘はいまだに「たまご」と動物たちの魅力にどっぷりと浸かり、「うさぎさん、だ〜いすき」と喜んでいます。(総じて言えば小さなお子さん、動物好きのお子さん向き。)
イラストには、米国50年代のレトロな雰囲気が漂います。たとえフルカラーでもほんのりくすんだ色合いが時間の流れた証拠となり、絵本の中にひっそりと佇んでいる感じ。大人はそんなところに引かれるかもしれません。