主人公のトリシャはLD(発達障害の一種で学習障害)です。
でも、お話しの中ではLDという話は出てきませんが、
これが作者自身の自伝的なお話しだと言うことがわかりました。
トリシャは、学校に行っても字が読めないし書けません。
「私って、みんなとちがうのかな?」「あたまがわるいのかな?」
でも、トリシャは絵がとっても上手です。
ある日おばあちゃんに尋ねます。
「おばあちゃん、わたしって、みんなとちがう?」
「もちろんだよ。みんなとちがうってことは、いちばんすてきなことじゃないか。」
「わたしって、あたま いい?」
「おまえは せかいじゅうで いちばん かしこくて、おりこうで、
かわいらしい子に きまってるじゃないか。」
そういって抱きしめてくれるおばあちゃん。
おじいちゃんは、5歳になった日の儀式に、本にはちみつをたらします。
「はちみつは あま〜い。本もあま〜い。よめばよむほどあまくなる!」
そんな素敵なおじいちゃんやおばあちゃんは、そらのむこう側の世界に行ってしまいました。
ママの仕事で引っ越ししたけど、引っ越しした先でも、やっぱり
字が読めません。書けません。3年生なのに。
みんなにからかわれて、おじいちゃん、おばあちゃんのいたおうちに
もどりたい!トリシャの目に涙があふれます。
学校が大嫌いだったから、ずる休みもします。
そんなトリシャが5年生になったとき、新しくフォルカー先生という先生がやってきました。フォルカー先生は、トリシャの絵が素晴らしいと誉めてくれました。
でも、毎日のようにいじめるエリックから逃れるために階段下に隠れるようになったトリシャ。とうとうエリックに見つかって、引きずり出され、「うすのろもぐら!ばかもぐら!」体を小さく丸めて固まるトリシャ。胸がはりさけそうです。
幸い、フォルカー先生が見つけて助けてくれましたが、そのあと、「どうしてエリックは君をいじめるのかな?」話を聞いて、「きみは、自分をだめな子だとおもっているね。かわいそうに。ひとりぼっちでなやんでいたなんて。」「らくだいしないでここまでこれたなんて、きみは賢くて、それにとっても勇敢だってことじゃないか。きみはかならず読めるようになる。やくそくするよ。」そんな心強いことを言ってくれたフォルカー先生は、トリシャに字を書く特訓をしてくれました。
そうして、トリシャは30年たってフォルカー先生に再会した日、フォルカー先生に言います。
「信じられますか?子供の本を書いているんですよ。先生、本当に、本当に、ありがとうございました。」
フォルカー先生は、トリシャの得意なところをちゃんと見抜いていました。トリシャにあったやりかたでゆっくり教えてくれました。認めてくれる人がいてくれる。それはとっても大切なことです。子供達が自信を持って輝けます。人と違う、わずかな違いでからかったり、いじめたりしがちです。でも、トリシャのばあちゃんが言うように、みんなちがっていいんです。違うって事は、素敵なことなんです。
たくさんの子供達にこの本に出会って欲しいと思いました。
今度、高学年の読み聞かせで読もうと思います。