色の鮮やかさに惹かれて開きましたが、シンプルな表紙からは想像もつかないほど深い内容の絵本でした。
その中に含まれているメッセージは一見大人向けに感じますが、
小さな子は純粋に色彩で、少し成長した子はペツェッティーノの冒険物語として、一生楽しむことができると思います。
ペツェッティーノには、手も足も、表情もありません。
だからこそ、きっと子供たちは彼の気持ちを想像します。大人ならば自分に重ね合わせるかもしれません。
ペツェッティーノの心の中は、見る人によって大きく変わるかと思いますが、
私には、“自分は何者だろう”と考え行動する彼の姿は、悲観的なものには見えませんでした。
彼は好奇心旺盛で行動力があるし、結果を恐れずに船に乗る姿はとても勇敢でした。
けれども、こなごなになった後の一文で、あっと思いました。
“「ぼくは ぼくなんだ!」かれは おおよろこびで さけんだ。”
ペツェッティーノはずっと、世界でたった一人しかいない自分を、好きになりたかったんだと思います。
小さくて何の特技もない自分でも、誰かの一部でなく世界でたった一人しかいない“ペツェッティーノ”だと分かった時、初めて自分の事が好きになれたんじゃないかなと。
はしるやつ、つよいやつ、およぐやつ。
彼らも、一見似ているようで、全く違う色で出来ています。
みんながみんな、世界でたった一人の、大切な存在です。
自分を好きになり、他人を認め合う事が出来れば、世の中はもっと素敵になるだろうなと思いました。
だからこそ、“ペツェッティーノが うれしそうだったから みんなも うれしかったのさ”というおしまいには、とても優しい気持ちになりました。