【内容】
少女マイマイは、ある日、小さな弟を見つける。父も母も小さすぎる弟は見えない。クルミの殻に弟を入れ、二人は森に行く。白い馬に右の眼を壊されたマイマイは、クルミを右目に入れるが…小さな弟と姉の、不思議な物語。
絵:宇野亜喜良
編集:東 雅夫
【感想】
精神の異常を感じさせる、不気味な話でした。言葉が詩のようによく練られていて、一つの言葉からいろいろなものを暗示させてくれます。絵の雰囲気が西洋的で、非日常的。出てくる人物も白人っぽい骨格と、アンバランスな体形。病的な世界をうまいこと作っています。
単純ではないお話なので、何がどう恐ろしいか説明しにくい。「わからない状況になって、助からない」、「どんどん変な世界に突き進んでしまう」という恐ろしさがあります。基本的に、自分が理解できないものは怖いと感じる人間の本能のような部分に訴えかけてくる作品で、読み終わった後に、嫌な気持ちが割と長く残り、その日に見る夢に出てきそうな、息の長い恐怖感がゆっくり味わえます。
こういう作品を、自分が子どもの時に読んだことがないので、何とも言えませんが、大人が読んでも十分摩訶不思議な恐ろしさを体験できると思います。
特に、精神的に参ってくるような、恐怖感を体験できる作品と言えます。
自分を見失っていく恐怖、良かれと思ってやったことが最終的にはすべて裏目にでていく恐ろしさ、理不尽で理解不能な展開…。
この絵本を読むと、自分が今ここに本当に存在しているのか疑問になって、つい、自分の顔を叩いて確認したくなります。ご期待ください。