書店の売り場に並んだたくさんの絵本たちを何となく眺めていた時、
ひらがなの大きな題名と、色鮮やかな殻を背負った大きなでんでんむしの絵が突然目に飛び込んできて、思わずこの絵本を手に取りました。
日本画家鈴木氏の描いく、美しい世界と
短いけれど、とても深い意味を感じる、新美南吉のこのお話に
「ほぉ・・・」と感嘆の声を発してしまいそうな思いで
1枚1枚、ページをめくって行きました。
このお話の中のでんでんむしは、
自分が背中の殻にたくさんの悲しみをかかえて生きていることに
戸惑いを感じ、友だちを訪ね歩きます。
すると、どの友だちも自分と同じように
背中の殻にたくさんの悲しみをかかえて生きているのだということを知ります。
そして、悲しみをかかえているのは決して自分一人だけではないことや、
誰もが、悲しみをこらえて懸命に生きていることに気付くのです。
最後のページのでんでんむしは
『悲しみ』の殻を背負ったまま、
すがすがしさすら感じられる眼差しで
夕焼け空を見あげています。
あの夕焼け空の向こうに、
でんでんむしはいったい何を見ているのでしょう。
悲しみの向こうに、でんでんむしがじっと見つめているもの。
私は、それはきっと
‘生きる力’に繋がる『何か』なのだと感じます。
小さなうちから何度でも読んであげたい絵本だと思いました。
そうすれば・・・
子どもは、今は絵の通り、文字の通りに
このお話を単純に受け取るだけかもしれませんが、
いつかこの絵本に込められた深いメッセージを、
心いっぱいに感じる日が、きっとやってくると思うのです。