それまでル・カインを知らなかったン十年前、この1冊に完全にノックアウトされました。何と美しい、何と幻想的な…! 装丁全てに神経を張り巡らせた、珠玉の1冊。
1枚1枚の絵の緻密なこと。12人のおひめさまやお相手の王子達一人一人が描き分けられていて、いくら見ていても飽きません。矢川澄子さんの文章も素晴らしい。グリム童話なのに、キャラクター一人一人にしっかり個性があるところが魅力です。
主役の旅人と総領のお姫様が、大人で素敵。ル・カインの絵本は他にも沢山あって、「いばらひめ」なども美しい(仙女達の描き分けが素晴らしい!)ですが、物語の内容は、断然こちらの方が大人っぽくて洒落ています。
12人のおひめさま達が、毎夜どこかで靴を擦り切れさせてくる謎を、みすぼらしい元兵士の旅人が解き明かす、というお話です。
大人向けの絵本、かとも思いますが、ウチの娘も保育園の頃から大好きでした。一人で読めるようになってからも繰り返し読んでいます。