一人きりで地面の下に暮らすもぐら。昼間はトンネルを掘り、夜はテレビを見たり静かに過ごしています。平穏だけど何か物足りない毎日。そんな時、テレビで聴いたバイオリンの音色に、もぐらは心を奪われます。「あんな風に弾いてみたい」と思ったもぐらは、バイオリンを注文し、毎晩毎晩、練習を繰り返します。
長い年月をかけて徐々に弾けるようになっていく過程が、静かに丁寧に表現されています。もぐらの奏でる音色は最初は地上の木がしおれてしまうほど、ひどいものだったのですが、上達につれ、鳥や人が集い、多くの人が耳を傾け、しまいには争いを止める力をも持つようになります。
地下でバイオリンを弾くもぐらと、地上で起こっている出来事を一枚の絵の中に表現する描き方が、このお話しの魅力をとてもよく引き出しています。
「音楽って素敵だな」という思いをあらためて強く感じました。お気に入りのBGMを聴きながら、読みたい、読んであげたい絵本です。