
「ぼく、あのピッ、ピッ、っていうの、どうしてもやってみたいんです。」
ここは、深い山のふもとにあるえのき小学校。その学校図書館に、リンという名前のキツネの子がやってきます。
「ピッ、ピッ」をやってみたいと聞いて、あれのことかな? とすぐにピンとくる子もいるでしょうか。そう、「ピッ、ピッ」というのは、本を借りるときと返すときにバーコードをピッピッとやるあの作業のことです。キツネのリンと同じように、やってみたいとあこがれている子もきっと多いのでは?
そんなリンのお願いをすぐに受け入れてくれたのは、学校図書館司書のかえでさん。リンが図書館に入る前には、まずぞうきんで両方の前足と後ろ足を丁寧にふいて、カウンターの高さに合わせて座る場所を調節します。そして子どもたちが返した本の中から一冊取り出してリンの前に置きました。そしていよいよ……。
リンの気持ちを大切に接するかえでさんはもちろんのこと、おもしろいことが好きな校長先生、リンの「ピッ、ピッ」をやさしくサポートする図書委員のエリカさん、リンが図書室で貸出しをしてくれるのを楽しみにする子どもたち……このお話には大人も子どももやさしい人たちがたくさん登場します。またかえでさんがお弁当に持ってきた手作りのおいなりさんの美味しそうなことったら!
でも、なぜリンは、本の貸出しの「ピッ、ピッ、」という音にそんなにひかれたのでしょうか。その理由につながるリンくんの悩み、そしてそれが図書館にある図鑑から解決につながっていくという部分もみどころです。なにがあったのか、ぜひ本で確かめてみてくださいね。
文字も大きめで、やさしいイラストがたっぷり入っているので、小学1年生から読める易しい一冊です。学校図書館関係の編集の仕事に携わっていらっしゃるという葦原かもさんが描いた学校図書館の様子は、図書館という場所が持つあたたかで楽しい雰囲気がよく伝わってきます。また高橋和枝さんが描くキツネのリンの小ささや手足は、何度も見たくなってしまう愛らしさ。
素直でかわいらしいキツネのリンに会いに、また学校図書館がどんなところかが気になる子どもたちや、学校図書館が好きな子どもたちに届けたい、ありそうでなかった学校図書館の貸出風景の楽しさがたっぷり詰まったお話です。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)

としょいいんは、かし出しカードについているバーコードを、ピッとよみとります。
ある日キツネの子が、その、ことりの声みたいな「ピッ」をやってみたいとやってきて……
山のふもとの全校生徒18人のえのき小学校のししょのかえでさんと子どもたちとキツネのリン君の心温まるお話。
高橋和枝さんのかわいい挿絵がすべての見開きに入っています。
*小学校初級から(1年生からひとりで読める)
|