![みどころ](/images/shoukai_midokoro.gif)
この絵本は、「ピーターラビット」の生みの親である絵本作家ビアトリクス・ポターさんの、今まであまり知られていなかった、研究者としての歩みに焦点を当てたものです。表紙には興味深そうに虫眼鏡を覗いてきのこを観察している様子が、裏表紙には、サナギを一心にスケッチしている姿が描かれており、どちらも、地面にはいつくばっていて、その熱心さが伝わってきます。ビアトリクスは、生き物と自然が大好きなサイエンス・ガールだったのです。
よくよく見る。 なぜかって考える。 気になったものを集める。 ありのままに描いてみる。
こんな風に、弟のバートラムといろいろな生き物(ヘビやカエルも!)を飼育し、死んだ後も骨を観察し、正確なスケッチを残したビアトリクス。さらに深く研究したのは、キノコ類。ビアトリクスが子どもだった1870年代のイギリス・ヴィクトリア時代は、まだ女性研究者はおらず、上流階級の子女は家庭教師に教育を受けていました。ですから、ビアトリクスがキノコを観察・記録し、胞子の発芽に成功しても、誰も認めてくれなかったのです。
そんな環境にありながらも、「知りたい」という純粋な好奇心から研究に取り組むビアトリクスの姿勢は、科学者としての本質を感じます。さらには、女性が学ぶことを否定されていた時代を知ることで、学べることのありがたさも体感できるでしょう。女性研究者が認められなかった時代の伝記としても、ピーターラビットの生き生きとした描写の背景を知るツールとしても、たくさんの発見がある作品です。
(中村康子 子どもの本コーディネーター)
![出版社からの紹介](/images/shoukai_shuppansha.gif)
「よく見て、考えて、本物どおりにスケッチしたい」 世界中で愛される絵本作家は、生き物と自然が大好きなサイエンス・ガールでした。
ビアトリクスは少女時代、スコットランド高地の自然のなかを歩き回り、気にいったものすべてを集めてスケッチに熱中しました。たくさんのペットを飼い、動物の骨格まで観察して正確に描こうとしました。大人になるとキノコに魅せられ、スケッチはもちろん、研究を重ねて論文を書き、有名な学者たちに提出しました。1800年代の多くの女性と同様に、みとめられようと懸命だったのです。 のちに世界中で愛される絵本作家となったビアトリクスが、自然と芸術の両方に情熱をそそぎ、自分の道を見出すまでを描きます。知られざる一面に新たな光をあてた伝記絵本。
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