絵本紹介
2022.03.17
くまの子が嬉しそうに着ているのは、ふちのところがふさふさしたぼうしつきのマント。それがどのくらい好きかっていうと……。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは絵本『わたしのマントはぼうしつき』。小さな舞台を見るような可憐な動物たちのお話。どんな内容なのでしょう。
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
みどころ
「ふちのところがふさふさの、わたしのマントはぼうしつき」
くまの子が嬉しそうに着ているのは、真っ赤な色をした素敵なマント。頭まですっぽりかぶれば、耳までしっかりおおい、顔のまわりにはふさふさ。これで、雨がふっても雪がふっても大丈夫。
おともだちと一緒にいる時も、もちろんマント。悲しい時や嬉しい時はぼうしをかぶって。秋が来たらぼうしをかぶって、冬はもちろんぼうしをかぶって。だけど夏は……?
「わたしのマントはぼうしつき」
お気に入りのマントが、彼女にとってどれだけ大切なものなのか。その姿と表情を見れば、すぐに伝わってきます。いつでも、どんなときでも、一緒。本当は一年中だってずっと着ていたい。ああ、その気持ちよくわかる。だって、こんなに似合っているんですものね。
この絵本が描いているのは、お気に入りのマントへの一途な気持ちのみ。美しい風景も、日常生活も出てきません。登場するのは主人公と、おともだちのねことうまとの4人だけ。時には全員が真正面にこちらを向き、時には3人が集まったり、2人で話したり、みんなで手をつないだり。なんだか小さな舞台を見ているような不思議な構成です。けれど、この愛らしさはなんでしょう。展開だって飽きることがありません。それは彼らの豊かな感情表現のせいでしょうか。
どのページを開いても、東直子さんと町田尚子さんの魅力がたっぷり味わえます。きっとこの絵本も、誰かのお気に入りになるのでしょうね。
もう一つの鑑賞ポイントは…
みんながまっすぐこちらを向きながら繰り広げられる、くまの子とマントのお話。その独特な雰囲気に惹きつけられながらも不思議に思っていると、最後の「おやすみなさい」のページでハッとする。なるほど! だけど、その気持ちは一旦心にしまっておいて。親子でこの可愛い可愛い、小さな動物たちの「おともだち劇場」をじっくりと楽しみましょうね。
この書籍を作った人
東直子1963年広島生まれ。歌人・小説家。1996年「草かんむりの訪問者にて」で、第7回歌壇賞受賞。歌集に『春原さんのリコーダー』『青卵』(本阿弥書店)、『東直子集』(邑書林)。歌画集に『愛を想う』(画・木内達郎 ポプラ社)。小説に『さようなら窓』(マガジンハウス)、『とりつくしま』(筑摩書房)、『ゆずゆずり』(集英社)。絵本は『あめ ぽぽぽ』(くもん出版)が初めての作品。ミュージカル脚本やエッセイ、ラジオ・テレビ出演など幅広く活躍中。
この書籍を作った人
1968年、東京都生まれ。武蔵野美術大学短期大学部卒業。絵本作品に、『ネコヅメのよる』(WAVE出版)、『さくらいろのりゅう』(アリス館)、『いるのいないの』『あずきとぎ』(ともに京極夏彦 作、岩崎書店)、『おばけにょうぼう』(内田麟太郎 文、イースト・プレス)、『だれのものでもない岩鼻の灯台』(山下明生 文、絵本塾出版)、『たぬきの花よめ道中』(最上一平 作、岩崎書店)、『なまえのないねこ』(竹下文子 文、小峰書店)などがある。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長として、絵本ナビコンテンツページの企画制作・インタビューなどを行っている。大手書店の絵本担当という前職の経験と、自身の子育て経験を活かし、絵本ナビのサイト内だけではなく新聞・雑誌・テレビ・インターネット等の各種メディアで「子育て」「絵本」をキーワードとした情報を発信している。著書に『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)がある。