世界26か国の食べものを紹介した、楽しい大判絵本!
絵本紹介
2022.09.17
さかなくんは、だいたい学校が好きです。でも、ひとつだけきらいなことがあります。それは……。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『さかなくん』です。さかなくんが、学校へいくの? どんな内容なのでしょう。
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
みどころ
さかなくんは、小学生。今日も学校へ行きます。でも、さかななので、そのままでは外に出ることができません。ゴムのずぼんをはき、ガラスのヘルメットをかぶり、ひれにクリームをぬったら、最後にゴムのくつをはいて準備はおしまい。これでやっと学校へ行くことができます。
さかなくんは、だいたい学校が好きです。知らないことを教えてもらうのも、休み時間に友だちと遊ぶのも、みんなでお昼ごはんを食べるのも好きです。でも、ひとつだつだけきらいなことがあります。さかなくんは、体育が大きらいなのです。だって……。
作者は、デビュー作『そらからきたこいし』以来、それぞれの作品で多彩な魅力を放ち続けているしおたにまみこさん。『たまごのはなし』(ブロンズ新社)で第28回ブラチスラバ世界絵本原画展(BIB2021)金牌、第27回日本絵本賞大賞を受賞し、今最も注目を集める絵本作家の一人です。
最新作の主役は「さかなくん」。その内容を語ろうとする前に、どうしても目が釘付けになってしまうのは、表紙のさかなくんの姿。黄色いからだに水色のひれ、そして大きなくりくり目玉もチャーミングだけれど、彼はなんと家の玄関の階段を、自らの足(ひれ?)で降りているのです! これから何が起こるの? 期待しかもてません。
お話は、さかなくんの学校の生活が描かれます。さかなくんにも得意なことと、苦手なことがあって、失敗して「むっすりと」落ち込めば、はげましてくれる友だちもいて。そんなにみんなと変わらない毎日を送っているようです。でも、やっぱりさかなくんの家の中だけは、みんなと全くちがいます。
部屋には机もベッドもあるけれど、家の中は全て水で満たされています。泡がぷくぷく、水は青くてゆらゆら、差し込む光にきらきら、なんて素敵! うらやましくなってしまいます。さかなくんも、学校にいる時よりもリラックスして見えますしね。
さて、さかなくんは無事に体育の時間を楽しく過ごすことができるようになるでしょうか。前向きにがんばるその姿を見ているだけで、明るく元気な気持ちになってきます。さかなくんのことが、とても愛おしくなる一冊です。
こんな世界も面白そう!?
さかなくんの仕草や表情、そして学校や家の中の隅々まで。どんなに驚きの設定だったとしても、リアルな描写があるからこそ、子どもたちは自然とこの世界に夢中になってしまうのでしょうね。さらにヘルメットの上にちょこんと乗った黄色い帽子や、お昼ごはんの水草を食べる様子、にんげんくんと呼ばれている子……そこかしこに散りばめられている作者の繊細なユーモア感覚。見つけるたびに嬉しくなって、笑いがもれてしまうのです。
この書籍を作った人
1987年、千葉県生まれ。女子美術大学工芸学科卒業。背景美術制作会社勤務を経て、絵本作家となる。はじめて制作した絵本『やねうらおばけ』が、2014年第15回ピンポイント絵本コンペ優秀賞を受賞。繊細な鉛筆画で描き出す独特の世界が、読者を引きつける。作品に『そらからきたこいし』『やねうらべやのおばけ』(ともに偕成社)などがある。東京都在住。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長として、絵本ナビコンテンツページの企画制作・インタビューなどを行っている。大手書店の絵本担当という前職の経験と、自身の子育て経験を活かし、絵本ナビのサイト内だけではなく新聞・雑誌・テレビ・インターネット等の各種メディアで「子育て」「絵本」をキーワードとした情報を発信している。著書に『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)がある。