一面真っ白の雪景色で、心が温まる親子のおはなし
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絵本紹介
2023.02.28
みどころ
ことばを知らない生きものがいた。浜辺でごろんと横になり海をじっと見つめたり、時には小石を放りなげてみたり。のんびり気ままに暮らしていた。
「たのしい」気持ちになった時には、腕をのばし鳥のようにパタパタし、「おいしい」ものを食べた時は、うしろむきにくるりと三回宙返り。けれどそれをことばで何というのかは知らない。心に冷たい風が吹きぬけ、どうしたらいいのかわからなくなった時、顔をゆがめてただ苦しそうに唸っている。この気持ちを何というかだって、ことばにできないのだ。
ある日、その様子を見ている生きものがいた。ことばを知っている生きものだ。
「かなしい ことが あるんだ」
すぐにわかったその生きものは、ことばを知らない生きものに近づいていき……。
イギリスの高名な詩人ジョン・エガードと絵本作家きたむらさとしによるコラボレーションで生まれた、「ことばのない世界」と「ことばのある世界」で暮らす生きものの、出会いの物語。それぞれのんびり気ままに暮らしていた二人が、最初に心を通わせることのできた「ことば」とは?
自分の気持ちをことばで伝えあい、ことばが多すぎる時はただ黙ってそばにいる。誰かとわかりあえるって、こんなにも素敵なことなんだ! 二人で一緒に過ごす時間を見ながら、誰もがそう思うことででしょう。「ことば」について、感情表現について、そしてコミュニケーションについて。色々な考えを広げていってくれそうな一冊です。
この書籍を作った人
1949年旧英領ギアナ(現ガイアナ)生まれ。新聞社で編集や特集記事の執筆に携わった後、1977年イギリスに渡る。詩人として活躍し、世界各国のブックフェアで詩の朗読パフォーマンスをおこなっている。ポール・ハムリン賞、クイーンズ・ゴールド・メダル・フォー・ポエトリー、ブックトラスト生涯功労賞など数々の賞を受賞。著作は50冊以上にのぼり、邦訳書に『わたしの名前は「本」』(フィルムアート社)がある。
この書籍を作った人
1956年 東京生まれ。1982年にイギリスで絵本作家としてデビューし、以来、イギリスを拠点に世界的に活躍を続ける。約10年前に帰国し、現在は神戸市に在住。絵本作家、イラストレーターとして活躍。デビュー作「ぼくはおこった」(評論社)でイギリスの新人絵本画家に与えられるマザーグース賞を受賞。「ぼく ネコになる」、「おんちのイゴール」などの著書の他、「ふつうに学校にいくふつうの日」(小峰書店)では絵本日本賞翻訳絵本賞を受賞。その他「ぞうのエルマー」シリーズの翻訳者としてもおなじみ。
大切に
ことばをしらない生きもの。でも、感情はあって、それをあらわす言葉をしらない。言葉を使っている身からすれば、どれだけもどかしいのだろうと、想像すると、つらく思えます。同時に、日常、あたりまえのように使っている言葉のひとつひとつが、とたんに大切に思えてきました。ことばをとおして、ちかづいたふたり。ぐっときました。
(あんじゅじゅさん)
優しいハグを思わせるおはなし
言語を獲得しても、人間にはノンバーバルコミュニケーションが大事だなと再認識するおはなしでした。
ちょっと気難しいあかちゃんだった上の子は、発語が遅く癇癪も多めで、初めての育てる生き物にどう接するのが正解なのかよく分からなくて、いつもいつも抱っこしてくっついて安心してもらっていました。少しずつ言葉でやりとりできるようになってからも、言語化できない気持ちがありそうなときは、抱っこでくっついていたなぁと絵本のふたりを見て懐かしく思いました。
今は手をつながなくても、言葉で気持ちが伝え合えるようになり、言語化のスキルもつき、発した言葉で心がつながる実感もあり、言語はすごいと思います。
その一方で、たまに「かわいいなー」と大きく育った息子をハグしたり、頭や頬をなでたりするのも私にとって、また愛おしく大切な時間です。
どちらも大切なんだなと気付かされる、優しいハグのようなお話です。
(カオリンゴカモシレナイさん)
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