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絵本紹介

2023.12.27

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誰かの命は誰かの糧になり。『どんぐり』【NEXTプラチナブック】

絵本ナビがおすすめする「NEXTプラチナブック」(2023年11月選定)から、ご紹介する一冊はこちら!

どんぐりが梢から落ちてくる。どんぐりは生きようとしている。けれど、ほとんどは死んでいく。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介する絵本は、『どんぐり』。命を見つめ、向き合い続ける作者・舘野鴻さんだからこそ生まれた一冊。どんな内容なのでしょう?

NEXTプラチナブックとは…?

絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。

そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。

誰かの命は誰かの糧になり。『どんぐり』

無数のどんぐりが降ってきて…

  • どんぐり

    どんぐり

    作・絵:
    たての ひろし
    出版社:
    小峰書店

    みどころ

    見上げる木々の梢から、無数のどんぐりが降ってくる。
    こんな光景から、この絵本は始まります。
    地面に落ちた美しいどんぐりたち。しかし、ページをめくるたび、それらは森の生物たちに食べられていきます。野ネズミが食べ、鳥が咥え去り、穴が空いたどんぐりの表面からは中を虫が喰ったことがわかります。そこから生き残って根を出し芽吹いたどんぐりも、若芽が動物や虫に食べられ、ほとんどが死んでいきます。けれども……。

絵だけで進んでいくこの絵本。モノクロで描かれた木々の間から落ちてくるのは、無数のどんぐり。そのどんぐりには色彩が施され、言葉はなくとも、永遠に続く物語のはじまりを感じさせてくれる光景です。

そして、どんぐりが落ちた地点を定点観測するように、めぐる季節を越えて、植物、生物たちの営みが描かれます。精緻に描かれた画面に見入っていると、葉擦れの音や土の匂いまでしてきそう。

生きようとする命が、他の命の糧になっていく。落ちたどんぐりのほとんどが食べられ色を失い、生き残って芽吹いた僅かのどんぐりも、また容赦なく食べられていく。この鮮やかな色彩の対比にも、ハッと目を惹きつけられます。

ここに描かれる森の生命のやりとりに、誰もが圧倒されることでしょう。命を見つめ、向き合い続ける作者・舘野鴻さんだからこそ生まれた一冊。幅広い年齢の読者に手に取ってほしい絵本です。

編集長のおすすめポイントは……

生と死の真っただ中に立たされて

そこに言葉がなくても、風が吹き、森がざわざわと大きくうごめく音がする。耳をすませば、小さな生き物たちのかさこそと動く音が聞こえてくる。緻密に描かれた自然の絵の美しさと迫力に魅入られていると、いつの間にか読者は繰り返される生と死の真っただ中に立たされていることに気付くのです。舘野鴻さんが絵本の中で徹底的に描くのは、死んでいく命と生きていく命。読んだ後には途方に暮れる気持ちになりながら、でも、生きていることの奇跡をより実感することもできるのです。

この書籍を作った人

舘野 鴻

舘野 鴻 (たてのひろし)

1968年、神奈川県横浜市生まれ。札幌学院大学中退。幼少時より故・熊田千佳慕に師事。1986年北海道へ居を移し昆虫を中心に生物の観察を続けるが、大学在学中は演劇、舞踏、音楽に没頭する。その後、舞台美術、土木作業員、配送等の仕事をしながら音楽活動と昆虫採集を続ける。1996年神奈川県秦野に転居してからは生物調査の傍ら本格的に生物画の仕事を始めるが、リアルイラストの需要が激減した2005年頃より写真家久保秀一の助言を得て絵本制作を始める。絵本に『しでむし』『がろあむし』(偕成社)、『みかづきのよるに』『うんこ虫を追え』(福音館書店)、『宮沢賢治の鳥』(国松俊英・文/岩崎書店)、原作に『あまがえるのかくれんぼ』『ねことことり』(世界文化社)、読み物に『ソロ沼のものがたり』(岩波書店)などがある。

舘野鴻 作品一覧

磯崎 園子(いそざき そのこ)

絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。

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