絵本紹介
2023.12.28
時計やカレンダーの数字は、時間や月日を教えてくれる。でも、時間ってなんだろう? 毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『きみが 生きる いまの おはなし』。目には見えない「時間」を、親しみやすく表現したこの絵本、どんな内容なのでしょう?
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
みどころ
「チクタク チクタク」
聞こえてくるのは時計の音。時計やカレンダーの数字は、時間や月日を教えてくれる。でも、時間ってなんだろう? 時間って、どういうことなんだろう? 目には見えないけれど、確かにここにある時間。親しんでいるはずなのに、つかみどころのない時間。
例えば、こんなことかもしれないね。
時間は、種かもしれない。じっと眠っていて、その時がくると花になる。そして、やがてしおれてしまう。
時間は、チョウかもしれない。だって、もともとは小さなアオムシだった。あるいは、時間は思い出かもしれないし、髪の毛がのびることかもしれない。時間はゆっくり進むこともあるし、あっという間に過ぎていくこともある。時間は……。
髪の毛を長く長くのばしても、ちょきんと切ってしまえば、一瞬できえちゃう。
みんながそれぞれに感じる時間。同じだと思っていたけれど、どうやら色々な顔を持っているのかもしれない。もっと複雑なのかもしれないし、意外とシンプルな気もする。
次々に登場するスタイリッシュな絵と、わかりやすく味わい深い言葉による、さまざまな「時間」の具体例。この魅力的な絵本を通して見えてくるのは、「いま」という時間がとっても愛おしいということ。その時にしかない、大切な一瞬なのだということ。
絵本を読んでいるきみにとって、今というのはどんな「時間」? 一度目と二度目はちがった? ……頭の中をぐるぐるさせながら触れてほしい一冊です。
つかみどころがないからこそ
つみ重なっていく時間、変化していく時間、切り取った時間、自由を感じる時間、じっくり考えるための時間、みんなで一緒に過ごす時間。年齢によって、環境によって、経験や状況によって、印象に残るページがそれぞれ違うのかもしれませんよね。時間は繰り返しているのかもしれないし、ただただ前に進んでいるのかもしれない。考えれば考えるほど、つかみどころがなくなっていくようです。でも、だからこそ、タイトルにある「きみが生きるいまのおはなし」が聞きたくなるのです。きみが生きる今は……。
この書籍を作った人
カナダ、バンクーバー在住のイラストレーター・絵本作家。邦訳されている絵本に『きみが 生きる いまの おはなし』(文研出版)、『世界はこんなに美しい アンヌとバイクの20,000キロ』(山烋)、『サディがいるよ』(福音館書店)、『スワン―アンナ・パブロワのゆめ』『きょうがはじまる』(ともにBL出版)、『はじまりは、まっしろな紙』(フレーベル館)などがある。
この書籍を作った人
子どもの本の翻訳家。埼玉県生まれ、山形県在住。訳書に『わたしたちだけのときは』『ほしのこども』『目で見ることばで話をさせて』(以上、岩波書店)、『きょうはふっくら にくまんのひ』(偕成社)、『地球のことをおしえてあげる』『わたしの心のなか』(以上、鈴木出版)、『きみは たいせつ』(BL出版)、『ジュリアンはマーメイド』(サウザンブックス社)など。JBBY会員。やまねこ翻訳クラブ会員。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。