のりもの好きな子大集合!
「せーのっ」「はっ」誰でも彼でもみんな軽やかにジャンプ!毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介する絵本はシゲリカツヒコさんの最新作『なわとびょ〜ん』。苦手意識も、モヤモヤした悩みも、ぜ〜んぶとんで解決。いったいどんな内容なのでしょう?
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
みどころ
ケンタはなわとびが苦手。いばりんぼうのツヨシのことはもっと苦手。だって、クラス対抗の大なわとびの練習ではケンタのことを怒ってばかり。(今日はこのままサボっちゃえ)走って帰ろうとしたケンタがぶつかったのは、大なわを持った謎の帽子をかぶった男。
「ぼうず、なわとびはできるかい?」
「まわすだけなら……」
気が付けばケンタはお年寄りがたくさんいる公園に。すると男はいきなり大なわをまわしはじめた!ああっ、あぶないっ!みんな、よけてーーっ! ところが……
「はっ!」
何ということ。腰が曲がっていたおじいさんたちが軽やかにジャンプ。なんでも、これは絶対にひっからないなわだと言う。畑に行けば、大きすぎて抜けないかぶが。道路に行けば、渋滞していた車やトラック。殿様のお屋敷に行けば、隠れていた忍者たちが……。そんなことってあるの!?
「せーーのっ」「はっ!」
あるんです。見てください、この見事なとびっぷり(抜けっぷり)。なんて大胆、なんて気持ちのいい。スカッとします。車だって、お侍だって、猛獣たちだって、一度とびだすと夢中になってしまうのです。こんな信じられない光景を繰り返し見せられたら、なわをとぶことを怖がっていた自分なんて、忘れてしまうくらい。ほら、ケンタだって……。
ページをめくるたびに笑ってしまい、どんどん読み進めているうちに、ケンタは苦手克服、友情だってしっかりと築きあげてしまっている。これは案外真面目なお話なのでしょうか。…‥‥いえいえ、やっぱり。これは、ただひたすらに爽快で楽しくて驚かせてくれる、シゲリカツヒコさんの魅力がたっぷり詰まったユーモア絵本なのです。なんでもかんでも大なわをまわせばとんでしまうその光景、皆さんも見てみたいでしょ?
納得させられてしまう
描き込めば描き込むほど、その描写がリアルになっていくほど、なぜかユーモラスになっていくシゲリカツヒコさんの絵の魅力。絵本の中ではいつも、あり得ないことが起こり、あり得ない光景が繰り広げられ、それでもいつも、納得させられてしまう。こんな楽しいことってあるでしょうか。とても不思議だけれど、それはあくまで日常のすぐ近くにある世界。身近で親しみやすいファンタジー、子どもたちは好きに決まってますよね。
この書籍を作った人
1962年生まれ。岐阜県各務原市出身。フリーのイラストレーターとして装画などを手がける。『カミナリこぞうがふってきた』(ポプラ社)で絵本デビュー。細部までとことん描写するユーモラスなタッチと奇想天外なストーリー展開で、絵本の世界を表現してきた。2018年『大名行列』(小学館)で小学館児童出版文化賞を受賞。他の作品に『だれのパンツ?』(KADOKAWA)、『ごじょうしゃありがとうございます』『ガスこうじょう ききいっぱつ』『妖怪伝』シリーズ(いずれもポプラ社)、『バスガエル』(作・戸田和代/佼成出版社)、『ぼくはまいごじゃない』(作・板橋雅弘/岩崎書店)、『アイアン・マン』『マジックショップ』シリーズ(共に講談社)などがある。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長として、絵本ナビコンテンツページの企画制作・インタビューなどを行っている。大手書店の絵本担当という前職の経験と、自身の子育て経験を活かし、絵本ナビのサイト内だけではなく新聞・雑誌・テレビ・インターネット等の各種メディアで「子育て」「絵本」をキーワードとした情報を発信している。著書に『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)がある。