ある日、てんぐさまの自慢の鼻におできができて…?
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「子どもから、想像力を奪わないでください」インパクトを残した衝撃のCMから20年。新しく絵本となって登場です。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは『まっくろ』。発売と同時に大きな話題に。どんな内容なのでしょう?
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
みどころ
「こころにうかんだことを かいてみましょう」と言うと、ひとりだけ画用紙を真っ黒に塗りつぶしている男の子がいる。先生がびっくりして、「ちゃんとした えを かきなさい」と言うけれど、男の子はやめません。
学校が終わっても、家に帰っても、朝になっても、休みになっても。男の子は、画用紙を真っ黒に塗りつづけ、部屋にはどんどん黒い紙が増えていく。大人はみんな心配顔。だけど、ある時不思議なことが起こります。男の子が塗るのをやめた時、そこにうまれたものは……?
先生だけでなく、まわりの子どもたちものぞきこむ。
一体何が起きているのだろう。集中している男の子の姿を見ながら、とまどってしまうのは、読者も一緒。学校にも、自分の部屋にも、家の中にも、保健室にまで、どんどん増えていくまっくろな画用紙。まっくろけ、まっくろくろけ。
けれど、画面を埋めていく黒い色を見ていると、不思議とどこかやわらかく。怖いという気持ちは生まれません。それは闇というよりも、深みのある豊かな色。きっと、彼のまわりの人たちも同じだったのでしょう。そうやって見守っていった先で、男の子の見ていた世界を、ようやく私たちも知ることができるのです。
世界中から賞賛された、「子どもから、想像力を奪わないでください」というメッセージがインパクトを残した衝撃のCMから20年。その内容が、CM制作者の高崎卓馬さんの文章と、黒井健さんの絵によって、新しく絵本となって誕生しました。
「想像力の可能性」というテーマは変わらずに、でもその結末は、子どもたちの心をワクワクさせてくれるものです。黒井さんがこだわり続けたという、男の子が生みだす魅力的な世界。今度は絵本の中で味わうことができるのは、とても嬉しいことです。
しっかりと見守ることが
男の子の手によって生みだされたものは、私たちの想像をはるかに超えたもの。驚いてしまうのも無理はありません。誰もそれを見たことがないのですから。どうして彼にはわかるのでしょう。けれど、その姿が少しずつ見えてくるにつれ、彼のまわりにも理解者が増えていき、一緒に完成させていくのです。手伝いはじめる子どもたちの様子もふくめ、しっかりと見守り、後押しすることだけが、大人の役割なのかもしれませんねよね。
この書籍を作った人
1969年、福岡県生まれ。早稲田大学法学部卒業。クリエーティブ・ディレクター、小説家。ACジャパン創設30周年CM「 IMAGINATION/WHALE」で海外の広告賞を多数受賞。小説に『はるかかけら』『オートリバース』などがある。
この書籍を作った人
1947年新潟県生まれ。新潟大学教育学部中等美術科卒業。児童出版美術家連盟会員。主な作品に『ゆきのひのころわん』他ころわんシリーズ(ひさかたチャイルド刊)『手ぶくろを買いに』『ごんぎつね』(偕成社)『おかあさんの目』(あかね書房)他多数の作品がある。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長として、絵本ナビコンテンツページの企画制作・インタビューなどを行っている。大手書店の絵本担当という前職の経験と、自身の子育て経験を活かし、絵本ナビのサイト内だけではなく新聞・雑誌・テレビ・インターネット等の各種メディアで「子育て」「絵本」をキーワードとした情報を発信している。著書に『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)がある。