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《スペシャルコンテンツ》インタビュー

2011.11.30

おくはら ゆめ さん
『やきいもするぞ』インタビュー

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『やきいもするぞ』:おくはら ゆめ さん

『くさをはむ』(講談社)や『まんまるがかり』(理論社)、『チュンタのあしあと』(あかね書房)など、ふんわりとした動物達の、のんびりとした日常をクスッと切り取る絵本作家、おくはらゆめさん。
そんなおくはらさんの新作は今までとは一味違った、動物達の活気をそこここに感じられる作品です。「エイエイオー!」のかけ声とともに、どこからともなくあま〜い匂いとくさ〜い臭いがしてきそうな絵本『やきいもするぞ』についてお話を伺いました。

やきいもするぞ

やきいもするぞ
作・絵:おくはら ゆめ
出版社:ゴブリン書房

森の動物たちは、焼き芋に夢中!お腹いっぱい食べたあとは「おなら大会」のはじまりです。
かわいいおなら、元気なおなら、おどりたくなるおなら、いろんなおならのオンパレード。
〈おいものかみさま〉もあらわれて……。
あたらしい「やきいも絵本」の登場です!!

「あっけらかーん」と「ハードボイルド」な絵本です。

─── 『やきいもするぞ』はタイトルのからすでに力強さとやる気に満ち溢れている感じがしました。

ありがとうございます。
実は最初は焼き芋の話を絵本にする気持ちはなかったんです。ただ、以前、仲間を集めて焼き芋パーティーをしたことがあって、それがすごく楽しかったんですよ。夕暮れ時に懐中電灯かざしながら芋を掘ったこととか、近くの落ち葉のたまり場からこっそり落ち葉を取ってきて芋を焼いたこととか…。焼けた芋はもちろん美味しかったし、おならも出ちゃう(笑)。
集まったメンバーは仲良しなんだけど、ベタベタした感じじゃなくて、普段は個々に楽しんでいる感じなんです。でも、やきいもパーティーでは、みんな「焼き芋」という目的に向かって力を合わせている…このことがすごく印象に残ってしまって。

─── まさに『やきいもするぞ』の動物達そのものですね。

そのときの楽しさをそのまま絵本にできたらって考えていたときに、一番最初の場面が頭に浮かんできて、束見本(ダミーに使われる真っ白な冊子)にスラスラっておはなしが生まれていったんです。私、いつも原画を描くとき、最初に鉛筆で下描きをしてから本描きするんですけど、そのときは何故か最初から本描きの墨で描いていたんです。でも、出来上がったものを読んだら「おぉ、あっけらかんとしている」とすごく嬉しかったんですね。
というのも、最近人から「絵本を作るときに一番大事にしていることってなんですか?」って聞かれると、「いっぱいあるけど、今、一番大事にしているのは“あっけらかんとしている”ことです」って答えているんですね。その思いが上手く形になったなって思いました。

─── 特にお気に入りの場面はどこですか?

そうですね…。
イノシシが焼き芋の焼き加減を見ている場面。使い方はちょっと違うかもしれないですが、「ハードボイルド」な雰囲気が出ているなぁってお気に入りです。

─── ハードボイルドですか?

はい!今回「あっけらかーん」と、もうひとつのテーマが「ハードボイルドな絵本」なんです(笑)。このイノシシの「そろそろいいぞ、よくやけている」って、実はかなり低音で呟いているんです。イノシシ的には手にしているのはピストルなんです。焼き芋じゃなくて(笑)

─── そういわれると、「007」のように見えてきますね…不思議…(笑)。

もちろん、「これ、ハードボイルド?」って言う人もいると思います。ハードボイルドはまだまだ修行中なので…。この作品でハードボイルドの片鱗を見出して、今後はメキメキ、ハードボイルド度を上げていきたいです!

─── 私は全員が焼き芋を食べている場面が大好きです!
お芋の色がめちゃくちゃきれいで、じっくり焼いた感じがなんとも言えずおいしそう…。
あと、動物達が焼き芋を作るまではお互い協力しているのに、食べるときはみんなそっぽ向いているのもすごく可笑しくて…。

この場面は、動物達が夢の様な世界に行っているように見えたらいいなと思って描きました。桃源郷の様な…でも、それぞれみる夢は別々なんです(笑)。
そうしたのも、私は子どもも大人もみんな、いつでも同じように仲良くしなきゃいけないってことはないと思っているんです。その日、遊びたい気分だったら一緒に遊べばいいし、気分じゃなかったら無理強いする必要はない。それぞれが好きなことをやっているのが、一番生き生きしていると思うんです。
この動物達もいつも仲良くしてるわけではないし、食べるときもバラバラだけど、焼きいもするときやおならするときは、みんな一緒。そういう関係を描きたかったんです。

─── 同じ目的に向かうときの一体感が「やきいもするぞ エイエイオー!」という一言に凝縮されているんですね。それが絵本から感じる勢いにつながったんですね。

そうですね。この動物達の焼き芋に対する熱い思いが一番伝わる形を見つけるために、今回は絵の描き方も少し変えているんです。

─── 例えばどんなところですか?

紙を変えたり、画材を変えたりというところです。いつもはコットマンというちょっとざらざらした紙や、アイボリーケントという紙を使うことが多いんですけど、それを試してみて「ちょっと違うなぁ…」と思ったので、ダンボールを薄くして描いてみたり、他の紙を試してみたり。最終的に和紙を使うことに決めました。

─── この独特な質感は和紙なんですね。

はい。ただ、普通の和紙をそのまま使うのもちょっと雰囲気が出なかったんで、紅茶で染めました。染め色の濃さなんかも何度も描いて一番いいものを探していきました。
あと動物達の線も最初は墨汁で描いていたんですよ。でも墨汁は和紙との相性が良すぎて、しみこんでしまって。描いてみたらなんだか「はんなり」な感じになっちゃって、違うなぁ…と。私はハードボイルドを目指していたんで(笑)。色々試して、最終的に黒い線はアクリル絵具を使いました。

─── 焼き芋の鮮やかな黄色や、森の緑は何を使っているんですか?

日本画で使われる顔彩です。
そうやって色々画材を変えたりしていたので、いつも以上に沢山の原画ができてしまいました。

─── そのような試行錯誤はいつも行っているんですか?

いつもは大体3〜4枚描くと、今回描きたい手法が見つかるんです。今回は色々試したくなってしまって…(笑)。でも、そうやって同じ場面を何回も描いていると、だんだん前のものをなぞるような、単調な感じになってしまうこともあって…。そんなときはちょっとビールとか飲みながら、勢い付けて「えいえいえい!」って描いたりしました。そうやって描いていたら、結局30枚くらい原画ができてしまいました。

─── そんなに沢山!?
でもそのくらい色々試されたからこそ、この日本昔話のような独特な雰囲気が生まれたんですね。

ありがとうございます〜。褒め殺されますね〜(笑)

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おくはら ゆめ

  • 1977年、兵庫県生まれ。辻学園日本調理師専門学校卒業。2005年、MOE絵本・イラスト大賞 年間グランプリ佳作、2006年、第12回おひさま大賞最優秀賞、2007年、第8回ピンポイント絵本コンペ入選。『ワニばあちゃん』(理論社)でデビュー、同作で、第1回MOE絵本屋さん大賞新人賞入賞。『くさをはむ』(講談社)が第41回講談社出版文化賞絵本賞受賞。その他主な作品に、『チュンタのあしあと』(あかね書房)、『まんまるがかり』(理論社)他多数。

作品紹介

やきいもするぞ
作・絵:おくはら ゆめ
出版社:ゴブリン書房
ワニばあちゃん
作・絵:おくはら ゆめ
出版社:理論社
チュンタのあしあと
作・絵:おくはら ゆめ
出版社:あかね書房
まんまるがかり
作・絵:おくはら ゆめ
出版社:理論社
バケミちゃん
作・絵:おくはら ゆめ
出版社:講談社
ネコナ・デール船長
作・絵:おくはら ゆめ
出版社:イースト・プレス


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