イラストレーター宇野亜喜良さんが芸術監督をつとめるダンス・エレマン舞台「美女と野獣」のために書き下ろした脚本を絵本化。「美女と野獣」はディズニー版が有名ですが、それだけではありません。本作は、宇野さんが敬愛してやまないジャン・コクトーへのオマージュとして作られた絶品。 ストーリーは、美女・ベルの父親が、森で道に迷った夜、誰も出てこない不思議な館でもてなしを受け、一夜を過ごします。翌朝、うっかりバラの花を摘み取ってしまった父親に激怒した野獣が姿を現し、命をもらうか、娘を身代わりにしろと父親に迫ります。そのバラは、野獣が大事にしていたバラでした。――というところから始まります。 ベルを愛する野獣、愛してはいけない野獣を愛してしまった妖精、愛することを知ったベル。誰かを本当に愛した者だけが知る悲しみと孤独。心震えるストーリーと古書風のテイストに甘美にマッチした絵が見事です。さすが宇野さんです。 舞台では、美女役に吉川ひなの、野獣にNYで活躍中のダンサーTAKE、妖精にヴァイオリニスト川井郁子がダンサーたちと華麗な世界をつくりあげます。
美女と野獣を読んだのはもう何十年も前のことです。けれども最近、このお話を読んでも、とても新鮮で感動しました。私は昔、何人もの凄い美人と仲良くしていた時、オレたちは美女と野獣だなんてジョークを言っていたことがあります。これは父親の犠牲となって醜い怪物と結婚した娘が、愛の力によって怪物を魔術から解放し、怪物は高貴な王子の姿に戻って娘と一緒に幸せに暮らすというストーリーです。何よりも愛の力の素晴らしさを教えてくれると思います。何度も読みたくなるお話です。 (水口栄一さん 60代・その他の方 )
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