本を開いてまずひきつけられるのは、手紙が描かれたすてきな見返し(表紙を開いてすぐの見開き)です。 つたない英文字と絵が添えられたこの手紙は誰が書いたの? さあ、物語はすでに始まっています。
舞台は、移民が多く住むようになった時代のアメリカ。 メキシコ移民のお父さんお母さん、そして小さなロベルトは、英語が全く話せないままでした。 ところがある日、お父さんとけんかをしたお母さんが、子どもたちを置いて家を出ていってしまう大事件が起ります。動揺し悲しむロベルトでしたが、近所の人に勧められて「子どもセンター」という施設に通うようになりました。そこではじめて、地域のコミュニティに入っていくことになったロベルトに、成長のきっかけが次々訪れます。 英語を学んだロベルトは、お母さんに家に戻ってもらうために英語で手紙を書くことを思いついて…。
『もりのなか』『わたしとあそんで』など数々の作品で愛されているマリー・ホール・エッツさんの1967年の作品です。 エッツさんらしい、鉛筆のやわらかい線での描写が印象的。 けして誇張することなく淡々とした描写なのですが、絵を見ているだけで、ロベルトの心情が徐々に変化し、自信をつけて成長していくのが伝わってきます。 本作は、エッツさんが貧困地区で社会事業をしていた頃に出会った、実在の少年をモデルにした物語だそうです。 「エッツの作品にある子どもたちへのあたたかな眼差しは、この活動の 経験に裏打ちされている」と、訳者のこみやゆうさん。 大変な境遇のなかでも、英語をしっかり身につけるロベルトの姿には、 学ぶことの大切さ、それを活かす喜びを感じさせられます。 お母さんを呼び戻すために、「英語」を活かしたロベルト。 その原動力となった家族への愛情にも心うたれます。 読み終わってあらためて、見返しにあるロベルトが書いた手紙の かわいい文字を眺めたくなります!
(長安さほ 編集者・ライター)
スペイン語しか話せないロベルトと家族は、アメリカで暮らしています。ある日、お父さんとけんかになったお母さんがいなくなり、ロベルトは習いたての英語でお母さんへの思いを手紙にします。少年の成長と親子の愛を描いた感動作。
小学校低学年くらいのお子さんの一人読みにもぴったりな1冊に思いました。
マリー、ホール、エッツさんの描く、シンプルな色合いながらもとっても素敵で魅力的なイラストが、ストーリーをわかりやすくしています。
裏表紙の手紙がもう何ともいいですね。
学ぶことの本当の意味もわかる気がしました。 (まゆみんみんさん 40代・ママ 女の子11歳)
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